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【愛知県】屋上緑化・作庭

今回の現場は、愛知県豊橋市の市内にある個人病院の屋上緑化である。屋上緑化といっても、2階のバルコニーなので、一部に半日陰や雨落ちがない部分もある。バルコニーの床部分に客土保持材として発泡スチロールが敷かれ、その上に透水シートかけ、土が乗せられている。

他の造園業者が施工したものだが、木々が弱り始めたというので矢野さんに再生依頼が来たらしい。当然ながら「通気浸透水脈」と「点穴」を回すこととなった。中央に芝生の通路を配し、その両側に二つが配備された。

緑化していない既存ベース部分と、手前が緑化の始まり部分。土の厚さはそれほどないのが解る。

外観。赤丸が屋上緑化の庭部。

排水孔は全部で3つあり、配管で地下へと導かれる。

緑化場所の雨水枡と、壁に沿う外部配管。

90度に曲がり広がる部分には島もできている。樹種は一般的な庭木のほかにオリーブやブルーベリーなどの果樹、そしてハーブ類なども植わっている。

以前は土だけでその上に板で歩道が作られていた(下写真は施工前、今年3月のもの)。

歩道を外して土盛りし、その上に芝を張って緑化のスペースを増やした。が、芝張りのベースが高すぎる・・・という矢野さんのチェック。両サイドの植え込みとつながる高さにすれば、もっと広く感じられるようになるという。

高さを変えるといっても、ただ低くすればいいというものではない。道の両側の水脈との接点の芝は剥がずに、片側から土を潜り込ませるようにして膨らみを持たせる。そして最初の芝張りが大事である。それを周到に作り込み、その部分をメジャー(定規)にして張り進む。

芝は手をげんこつにして叩くように土になじませ、竹を刺してしっかり止めていく。

芝同士の隙間をあけない。竹串は手で刺してからハンマーで叩いて頭をしっかりめり込ませる。

上から土(目土)をかけ、小型レーキで均していく。

途中の水やり。土を抑えて作業がやりやすくなるように、軽く全体に散布する。この日は風が強かった。

混みすぎた植木を剪定する。もちろん「風の剪定」である。枝の先端をつめるのではなく、奥から引きちぎるように風通しをよくしていく。枝先ばかり切っていると丸まった「仕立て枝」風になってしまう。風通しよくすれば細根化し、先端は伸びなくなる。一つの枝の葉の付き具合を観察し、それと相似形になるように全体の枝ぶりを整える。実は台風のとき、風は同じように枝葉を引きちぎっている。

落とした葉はかなりの量になっている。それらは捨てて持ち帰るのではなく、根周りにグランドカバーとしてまかれる。

中央が削られ、芝が張られて目土がかけられた道が完成。

しかし修正はまだ続く。点穴に立てられたコルゲート管の周りに土がかぶっていたので、草本の植栽を移動して管穴が詰まらないようにする。

ここで矢野さんが皆に説明図を描き始める。

植栽とコルゲート管との関係図だ(文字は私が入れた)。通気があることで、土の中に水蒸気がこもる。分厚いグランドカバーにも注目。これで表面が乾燥しない。

低木や草本の植栽も矢野さんがチェックを入れて直していく。田んぼのように並列させるのではなく、それぞれの根が絡んで連続するランダムなジグザグ型にする。そのほうが見え方も安定して美しい。水と空気の流れを中心に位置決めしていくと、おのずとデザインができていく。

土留め、見切りの石板の角が尖っていたのでそれをハンマーで丸く欠く。風が滑らかに通り見た目も優しくなる。自然に風化したような風合いにするということだ。杭の先の切断面をやはり丸く面取りする、ということも矢野さんはよくやる。

最後に、田植えのように散在していた草本を石のほうに寄せて、中央に土の部分を広げた。このほうが、風が停滞しないだろう。

植栽エリアのグランドカバーに入る。くん炭(米のもみ殻を炭にしたもの)を最初にまき、次に並腐葉土、粗炭、粗腐葉土(チップ)の順に重ねていく。

市販のくん炭。

市販の並腐葉土。バークというのは樹皮を細かくしたものである。

粗炭。

粗腐葉土(チップ)。

このようにグランドカバーは4層にも分けて載せられる。屋上緑化の環境はそうしなければならないほどデリケートで過酷だということである。

炭とチップで覆われると見た目にも安定感が増す。たっぷり水まきすれば相当の保水力を確保してくれるだろう。

個人病院は1階には駐車スペースを取りたいために庭が作れない。2階をリビングにして、バルコニーを庭に仕立てるのはいいアイデアだし実になごむ風景だ。ブルーシートが掛かっているエリアはウッドデッキになっている。家族にとって慰安であり活力を取り戻す場所でもあるだろう。この庭が成功するかしないかは、住人にとって大変重要なことだ。

最後の仕上げにかかる。大地の再生の中で最も重要かつ、逆に見た目には最も無粋なコルゲート管の飛び出し、それを地面ぎりぎりまでノコギリで切っていく。

そして飛び出し過ぎて風をさえぎっているシュンランの葉をカットしていくのだが、矢野さんは直角に切らずに斜め切りにして、既存の葉と表情を合わせている。細かい・・・。

さてこの奥には和室があり、その前は白石を敷いた枯山水の庭風になっているのだが、その表情が凛としていない。

それを矢野さんが見逃すはずはなく、ごろた石の間に混じった枯れ草を取り去り、新たなごろた石を追加。そして緑のリュウノヒゲの表情を整えていく。

「このような坪庭は、大自然の縮小版とするなら、森林限界の高山帯のような場所、最も厳しい美しさが表現されていなければならない」。高山帯は、ときには嵐のような凄まじい水と空気がぶつかることで、形作られた自然の景色である。「厳しい命のスクランブルで助け合っている」だからそのつもりで「ギアチェンジをして向き合わないと」いけない。

植栽の少ないこのような場所ではコルゲート管の立ち上げはより目立ってしまい、無粋さがいっそう際立つ(矢印)。先にカットしておき、ごろた石のレベルを先にパイプで決めるのがよい(赤丸は後からカットして目立たなくなった所)。そしてごろた石の間にはチップや粗腐葉土などを入れてはならない。その隙間は空気が出入りする通気孔になるべきところだからだ。

そのためには、ごろた石の置き方も重要である。「自分から土圧をかけてしまう置き方になっている」。そうではなく「石が側面からの土圧を支える置き方にする」。そして草の周りにだけ並腐葉土と、その押さえに砂をまいておく。

植木部分に水をたっぷり与える。実は散水ノズルに不備があって、均等に水が出るタイプを買いに行かせる一幕もあったのだが、そのノズルは外してしまい親指で調整しながら水を撒き始めた。慣れればこれがいちばん的確な水やりができるそうだ。

最後に芝を張った道の上にくん炭をまきその上に並腐葉土をまく。さらにその上に砂をまいていく。べたっと置かずに雪のようにまいていく。この砂は、腐葉土の押さえであり目地にもなる。

それにしても、地面から切り離された場所で、これほど豊かな庭環境が作れるということが驚きだった。都市環境はますます過酷になっている。「大地の再生」のシステムなくして屋上緑化の成功はないだろうな・・・というのが今日の私の結論だった。

レポート:大内正伸(イラストレーター・作家)/2019年5月19日

 

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