活動事例レポ
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【屋久島】湯泊歩道、一湊

昨年の屋久島講座の下見で矢野さんは縄文杉まで行ったのだが、近くに泥だまりがあったそうで、大地の再生視点からみるとそれが縄文杉衰弱の原因ではないか? と考えている。5月の土砂崩壊を眺めつつ、トロッコ道の検証と縄文杉の周辺を調査する・・・それが今回の旅の主な目的だった。

5/10、矢野さんたちはすでに前日から入島しており、今日は早朝から荒川登山口に向かっている。私は大学の講演で出遅れたので、空港からタクシーで登山口へ直行し、単独で後追いする予定だった。

ところが、空港へ向かうバスの中で、矢野さんに同行するスタッフのH君より「前日の豪雨警報で荒川登山口行きのバスが運休になって縄文杉には行けなくなり、島の外周の調査に切り変えます」との連絡が入る。

さらに鹿児島空港に着くと、屋久島行きの飛行機が視界不良で欠航(!)になってしまった・・・。しかたなく鹿児島中央までまたバスで戻り、高速船トッピーで宮之浦港へ行く。トッピーは時速80kmで海上を走り、種子島経由だと2時間半程度で屋久島に着く。

入島後、メッセンジャーで連絡を取り合う。矢野さんたちはこれから島の南側にある湯泊歩道の崩壊地を見に行く予定だという。追随しようとバスを調べるが、同行するガイドの田中さんがタクシーを手配してくれ、港の食堂で昼食を食べたあとタクシーが迎えに来た。

タクシーの運転手さんはかつて土埋木(どまいぼく)の屋久杉を採取する山師たちの送り迎えをしたことがあるそうで、屋久島の山林の生き字引のような人であった。湯泊までの間、屋久島の自然の盛衰について、いろいろと興味深い話をうかがった。

かつて渓谷の岩場に群生してたいたツツジは盗掘によって激減したこと、子供の頃は磯で貝類がたくさん取れ、トビウオも海岸沿いで湧くように獲れたが、今ではどちらも極端に減ってしまったこと、屋久島の人工林のスギは二束三文で商品価値がみいだせないこと・・・などなど。中でもかつてタングステンの鉱山が屋久島に賑わいをみせていた話は初耳だった。そしていま一番の稼ぎ頭は「ガイド」職であろう、と。

南下するにつれ凄まじい豪雨に遭遇し、時折渡る河川を橋から眺めると濁流の勢いも半端ではない。結局、タクシーの運転手さんが合流地点の手前で電話確認したところ、矢野さんたちも危険を察して戻る算段をしているとのこと。周遊道で待機していると3台の車が戻ってきた。

矢野さんや田中さんに挨拶し、アペルイに新たに入ったというガイドのIさんの車に乗せてもらい、一湊を目指すことになった。Iさんは群馬出身で今年3月に屋久島に移住したばかりだ。家の中のカビの生え方が尋常ではなく、屋久島の湿度の凄さを体感しているという。

島の南東部では山裾から滝が落ちるのが確認できるほどの雨だったが、島の北端にある一湊はそれほど降らなかったようで、布引の滝も穏やかな表情だった。

昨年水脈整備したエコビレッジ構想の敷地、草の生え方もおとなしい。

橋の上から見る沢。布引の滝から続くこの沢がエコビレッジの敷地を周りながら、周遊道路の橋をくぐってすぐ海へ出会う。まるでプライベートリバーのようにこの沢があるという魅力的な立地である。

前回(5/30)確認した沢のポイントへ。

さすがにこの季節、ひと月以上経った屋久島の小沢は川風をさえぎる草の伸び方が目立ち、この間の雨でアク溜まりができている。矢野さんがノコがまを持って沢に入る。

川面に伸び出している草を払っていく。

皆もそれに習って作業を始める。

石を動かして・・・

泥アクの溜まりを流して解放させる。

流木や小石などで流れが詰まることでアクだまりができる。ということは流れが不均衡になっているということだ。

瀬や淵の出口の詰まりを解消することで、流れは均等になり、瀬音が変わり、風が流れ始めるのがわかる。初めての参加者もいたのだが、その作業は「自分の身も心も洗われるような」心地よい体験だったという。

滝は前回と変わらずいい感じである。

沢の上部の木々は昨年の春は透けていたが、今は密度が高く丸くこんもりとした表情になっている。「自然はエネルギーをかけたぶん、返してくれる。人の”気”のエネルギーをかけると、ちゃんと正直に応えてくれる。そして自然が応援してくれる。気が停止するとアクが溜まるだけ。気と行動を一つにすると相乗効果が生まれる・・・ここが大事」

河口を見に行く。

以前(昨年4月)は水が伏流して赤矢印の辺りに溜まりができていた。それを海まで、スコップで砂を掘り下げて導いたのだが、現在では青矢印の位置に水流が現れて海へとつながっている。

マッコウクジラのような岩がくっきりと姿を現している。この海にやがて海藻が戻り、貝類が採れ始めることを期待したい。

この日は楠川温泉に入り、安房の「かたぎりさん」とういうレストランで夕食をとった。アペルイで明日の予定を確認して解散。

縄文杉は逃したけれど、タクシーの運転手から貴重な話を聞いたり、新しいエネルギーを持った移住者たちに出会ったり、それなりに得難い1日だった。

レポート:大内正伸(イラストレーター・作家)/2019.7.10

 

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