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【屋久島】豪雨被害検証・1日目/一湊〜西部林道

屋久島の豪雨被害で登山者が閉じ込められたニュースは、矢野さんと豊橋の現場へ移動中の5/19日、新幹線車内の電光掲示板でキャッチした。昨年、トロッコ道などを回った記憶が頭をよぎる。やはり見に行っておくべきだろう。矢野さんのスケジュールから5/30〜6/1の三日間を屋久島の取材調査に当て、私は記録係として同行することになった。

鹿児島空港で矢野さんと合流し、快晴のなか朝の飛行機で屋久島に飛ぶ。上空から見る屋久島は平穏で、西日本豪雨のときのような崩壊の爪痕(つめあと)は見られない。それでもやはり部分的にはかなりの豪雨であったようで、県道(周回道路)の低いところは水浸しになって通れない場所も出たとか。

崩壊がひどくて自衛隊が救助に向かった崩れヶ所(赤字・矢印は筆者)。すでに道路の崩壊ヶ所は片付けられており、明日は開通予定。

というわけで、今日は核心部には行かず、一湊と西部林道を回ってみようということになる。途中で見た今回の雨で壊れた橋桁。

水位は平常に戻って透明度も高い。流木が引っかかっていても良さそうだが、そんな生易しい増水ではなく、海までぶっ飛んでいってしまったのだろう。

このような土嚢が積まれた崩壊ヶ所は県道沿いにいくつか現れるが、あの西日本豪雨の広島のような規模と悲惨さは今回の屋久島には見られない。

昨年、数回訪れた「一湊エコビレッジ」、布引の滝の川の河口は澪筋(みおすじ)ができ石が現れている。昨年の4月にきたときは砂に埋まって水流がまったく見えなかった。

橋の上流は途中から伏流してしまっているが、石が露出して澪筋は感じられ、なにより両岸のヤブ化がおさまって川風が走っている。

エコビレッジの敷地。

水脈と風の草刈りによって再生された空き地。廃材の山は炭に焼かれ水脈の資材となって片付いた。ヤブ化がおさまって管理しやすい風景になっているのが解る。

布引の滝の下流の流れ。

落ち葉とアク溜まりは解消されて、美しい流れを取り戻している。そして、それぞれの植物が固有の姿を取り戻して、コンパクトにくっきりと棲み分けを始めたのがわかる。

布引の滝は全体にカワゴケが発達していた。

落ち葉とアク溜まりがあった場所。石に着くコケも表情がよくなってきている。

布引の滝の上部の森は、木々が起き上がって表情が良い。

一方で隣の沢のくぼみは枝がうなだれた木が目立ち、一部がヤブ化している。ここは公園の埋め立てによって、本流への繋がりを失ったままの場所。

永田集落の手前で植林スギの枝枯れが目立つ場所があり、枝道を下ってみた。

コンクリートを大量に使った港があった。屋久島にはこのような小規模の港が点在しているが、その規模にしては大量にして過剰なコンクリートが使われている感じを受ける。

屋久島一美しいビーチと言われる「いなか浜」。ウミガメの産卵場でもあるが、砂が黒く変色している場所も見られる。

西部林道に到着。さっそく現れるコンクリートの土留め。染み出した沢水はコンクリートに黒いアクを付けている。

林内に入るとヤクジカと遭遇。

半山のガジュマル。倒壊したのは2012年頃。

クワズイモが光を得て大きく育つ。

しかし、この肥大は異常である。矢野さんによれば、グライ化した土壌がガジュマルの倒壊によって地表に出、その養分で大きくなったのでは・・・という。

ここ半山(はんやま)と呼ばれる場所は平坦で、石垣なども見られる。昭和中期まで集落があり、炭焼きなどもされていた。西部林道が開通する前だ。物資は船で移送されていたそうだ。

もうひとつのガジュマル。これはまだ健在だが、地中は詰まっている感があり、

水脈が埋まっているのだった。

顕著な水流らしき窪みを矢野さんが移植ゴテで掘り起こし始めると、ガイドの二人もそれに続いた。たちまち水流が現れ、水音さえ聞こえるようになる。すると水の上を風が動いてくるのが感じられる。

周回道路で水脈を塞いでしまった今、本来ならこのようなメンテナンスが欠かせない。木々が岩に根を回し、そこに腐葉土が厚く堆積してシダ類が繁茂する。本来なら、このような状態で覆われていたはず。

タマシダ。名前の由来の玉が見える。ここに水を蓄えるそうだ。

岩と根の間の腐葉土層が消え始めたもの。細根が見えている。

アコウの木。ガジュマルと同じくクワ科イチジク属。はじめ着生植物として育つが、やがて根を下ろして母樹を絞め殺し、気根を発達させながら巨樹となる。ガジュマルよりは締まった樹形で大きな枝を張り、大量の果実を動物たちにに提供する。

環境省が試験的に柵をかけた場所。全部で6ヶ所ほど作られているという。希少植物保護のためもあるが、シカの食害がどの程度影響しているか観察できる。これで3〜4年経っているそうだ。確かに食害が抑えられているように見える。しかし、ここがシカの食害程度で疲弊する森であるはずがない。「本来はシカに育てられ、草は育つ」。地面が弱っているから食害が顕在化してしまうのだ。

キクイムシによる食害の跡。福島県三春の現場(福聚寺)でも見せてもらったが、地面に空気が通って樹勢が回復すれば、この被害はたちどころに消えるのである。

ヤクシマガクアジサイ。

ヤクザル。西部林道のアスファルトの路上で何度も見かけた。

島南部の山々の夕暮れ。

アペルイで田中君らに再会し、夕食をいただく。昨年収穫したというタカキビをごちそうになった。明日は崩壊の核心部を見に行く。

レポート:大内正伸(イラストレーター・作家)/2019.5.30

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