被災地ではまず被災ゴミの処理と、土砂の移動が最優先される。ここでも休耕地に土砂が山に積まれていた。
ところがその敷地の周囲にコンクリートのU字溝があり、グライ化した泥が堆積しているのだった。当然ながら周囲はヤブ化、樹木は息も絶え絶えに弱りきっている。
山側からU字溝に落ちている小さな水脈を見つけて、三つグワで掘ってみると青灰色の泥水が溢れるように流れ出てきた。
木々が暴れて苦しそうなのに、そしてこの詰まりこそが土砂崩壊や洪水の原因を作っているのに、U字溝はそのままに、流れてきた土砂をかつての農地に山積みしている。被災地ではこの土砂の移動に多大な予算と労力を費やしている。
畑に続く林道を整備。基本は道に沿う水脈の再生と、
林道の上を流れる水みちの整備である。水流を弱め、水切りによって左右に水を分散させる。等速・分散・浸透・・・これが水に対する重要な基本テーマだ。
後続隊が水切りの溝に枝葉を入れていく。車の通過によって溝がつぶれないように。
さらに上流の崩壊地から土石堆積地に乗り入れ、水切り。
やや大きな溝には大きな有機物を。
一方、こちらは土砂が流れ込んだ畑。ここを来春から使える畑地に再生する作業。
戻った矢野さんが畑に重機を入れる。
やはり周囲に水脈を入れるところから始める。
道の反対側には土砂被害をまぬがれた放置畑がある。その奥の竹林の竹を切る。大地の再生ではその土地の放棄山林から資材を調達することが多い。それが手入れにもなり風通しと景観を再生していく。
竹は参加者によって枝葉・幹に切り分けられ、水脈の中に炭といっしょに仕込まれる。
畑の水はけを確保・再生するためには、下流側の水路の整備も必要になる。
矢野さんの重機によって大きな畝溝が切られた。このサイズはいちがいに数値化できない。周囲の状況と、重機を入れたときの土の硬さや水分の感触によって決まる。有機ガスを発生させ植物を衰弱させるグライ土壌も、掘り返されて空気に晒されると良い肥料となる。来年はここで「サトイモを作るのがよいのではないか」という話が出る。
反対側の放置畑にも水脈が切られ、炭と有機資材が投入される。とりあえず今の季節にこのような空気通しの処置をしておくと、周囲の雑草も穏やかになり、来春・夏の畑再開が非常に楽になるのである。
もちろん水脈周りの風の草刈りも欠かせない。水脈とその周辺の風道を通すのは常にワンセットだ。水脈の上の風通しが周囲の土の中の空気を動かしてくれる。
暗くなって雨の中、参加者の感想会。きっさこの奥様が駐車場の整備にお礼を語る。カーブを描いた水切りの道を見て、「そういえば昔の川はこんな風に曲がっていましたね」とおっしゃっていたのが印象的だった。
一般参加者はここで散会。夜はライセンス講座参加者と講座スタッフによる座学。宿の「大槻屋」でプロジェクターを使って。
明日は丸森町で特に大きな被害を受けた被災地を案内していただく。
レポート:大内正伸(イラストレーター・作家)
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