活動事例レポ
ライセンス講座

【京都】プレライセンス講座/1日目

「大地の再生」技術を確かなものにするためにライセンス制度を作りたいと矢野さんの要望を受けて、7月中頃からその骨子が作られ、慌ただしい準備期間を経て、いよいよ本日、京都にて9月18日、第一回目「プレライセンス講座」が始まった。この講座は一回につき3日間を費やして行われる。

ここ一年半の厳しい現場を通じて、矢野さんの中で「大地の再生」の技術が煮詰まり、頻発する災害や地域の再生にこの技術が不可欠であり、ご自身の中でも「いまこそ教えるタイミングだ」という強い要望があるようだった。

当初は矢野さんの拠点である上野原で行う予定だったが、スケジュールの要請から京都の現場を通じて行われることになった。場所は京都市内の北東部、左京区修学院にある保育園内。園児は通常保育のまま、安全のため仕切りをして工事を行なう。

住宅地に囲まれた園内にクスノキ、ケヤキ、キンモクセイ、サクラ、ユリノキ、キウイなどの樹木が植えられている。既存のプールを一部壊して、その上に木造の新園舎を増築する。その工事にともない周囲の水脈整備とグラウンドのより自然親和的な改造を頼まれている。水の抜かれたプールには工事用の有機資材がすでに持ち込まれている。

今回、新スタッフとして葉山・植栽土木の施主でもあったKさんが企画・運営に参加してくれた。様々な意味においてこの講座の創出は困難が予想されたが、運営・会計に至るまで八面六臂の活躍。おかげで私(大内)は取材(記録係)に徹することができた。私もこの講座からカメラを新調し、動画撮影にも力を入れる。今後は技術の資料化を映像でも起こしていきたいと考えている。

この講座は以下の12回のテーマを予定しているが、現場の工事と同時進行で行われる場合などはテーマを絞るというわけにもいかず、多少の分散や重複が出る。

今回、第1回目は「見立ての原理、敷地の水と風の流れ、周辺水脈への継ぎ→風土への連鎖」というテーマで行う。レジメは以下の通りである。

このような都市部では「水脈」と「植栽」と「地形造成」がその空気感に大きな影響を与える。地上と地下の空気対流がつながること。すると都市部でも気持ちのいい息のできる空間ができ、夏の気温なども5〜10度ほどもちがってくる。

多くの都市では浸透水が取り込めない。が、京都は別格で、山に囲まれた盆地の、斜面変換点に名だたる神社仏閣があり、そこは鎮守の杜を擁して天然の水脈を確保している。ここの保育園でも強剪定された木々が、まあまあ元気に育っている。

参加者はスタッフを入れて20数名。まずは自己紹介。この講座に関する希望や抱負を各自に語っていただいた。

その後、図面を見ながら敷地の周囲を、主に水脈のつなぎを想定しながら、既設の水路を確認する。

園の裏側は宅地に隣接して狭いが、外水道などもあって既設管が入っている。

植えられた樹木はヤブ化して、お隣の樹木も暴れている。

マンホールを開けて、既設管の方向や大きさ、深さなどを確かめる。

こちらは車道側。車道の中央に埋設されている下水管もあり、側溝もある。敷地は落ちた雨がどの方向に流れていくのか? そしてどの排水路に集まるのか? を見極める作業。

少し離れた一角に手付かずの緑地があった。かつてはこのような畑地が広がっており、宅地に変わっていった・・・と推察できる。東側には比叡山から続く山並みがあり、その裾には修学院離宮や洛北屈指の名刹「曼殊院門跡」などがある。

再び園内に戻って車座に座り、矢野さんが喋り出した内容は、意外にも道具の整理と道工具車(下写真左上のトラック)のことだった。

矢野さんが造園屋を始めた最初は、道具に関して「軽トラと3畳の物置から始めた」という。様々な庭仕事に対処しているうちに資材が増えていき、この形ができたそうだ(他の組合の人たちはいつもスッキリしたトラックで、矢野さんの道具だけが増えていった)。

トラックに積み込むに当たって階層構造を作り、雨に濡れないようにシート屋さんに相談したり、高速道路を使っても物が落ちないように工夫を重ねていった。保管し、移動し、を繰り返しているうちに、道具の配置、収納しやすくて使いやすい整理を学んでいく。

サビとホコリで道具は傷んでくる。それには風通しのいい置き方が大事だ。空間と中身の感覚、ここに人と環境の出発点がある。道具とその置き方、管理、ここに向き合わなければどんな現場も見えない。

目通し=風通し。風通しの良い自然環境はどんな小さなものでも必要。「ライセンス講座で一番学んでほしいのは道工具資材との関わり」とまで矢野さんは言い切った。

各自、水脈掘りと移植の準備作業に入る。物置の移動。

寒冷紗(日除け)の張り直し。

このキウイ棚は移植される。隣接する道具置き場の解体と移動。

ここで昼になり、弁当を食べた後は2台の重機が動き始める。

バケットで掘ってみると、園内の土は硬いのは表面だけで、その下のほうは柔らかいことがわかる。

「穴を掘るために作業しているのではない。空気を通すためにやっている」。土の形と大きさと質、によって空気の通り方はちがってくるが、それは移植ゴテから学ぶことができる。水になったつもりで掘る、手感触で聴く。

移植ゴテによる力の入れ方、かきならし方、水が下にも浸透しすぎず、ほどよく浸透しながら、全体が無理なく等速で動く、この水切りの小さが技ができると、クワでもケンスコでもそれに沿った使い方が見えてくる。重機もまた同じ。

キウイの掘り取りに指導が入る。根鉢に土圧がかからないように、土圧を逃がす掘り方がある。3本の株は1本ずつに分けて掘り取る。また移植のための剪定作業も大枝を詰めすぎている。狭い場所では土の移動と置き場所にも注意を払わないと作業がしづらくなる。

コルゲート管を埋設し、炭や有機資材が入れられる。この際、枝の入れ方には細心の注意が必要である。

先端を素材に噛ませ食い込ませて「しがらみ」を作る。これだけで水脈の機能が全然ちがってくる(構造の強固さ、水脈としてのガイド、渦のでき方、微生物のはびこりかた、など)。

写真だけでは解りにくいので動画で見てみよう。

グランドカバーに枝葉を使うときは、足で踏んだとき上に飛び出してきた部分を剪定バサミでカットしていく。

夕刻、作業の終わり近くになって、地面に隠れていたマンホールが出てきた。これは明日への課題となった。

滋賀県東近江市にある徳昌寺が本日の宿。夕食後、本堂の隅をお借りして、夜の勉強会。これまで関わってきた山梨県の昌福寺の例、また先日の豪雨時に崩れて修復した葉山のKさんの現場などが紹介され、今回のテーマである「敷地の水と風の流れ」に即した解説が、スライドと矢野さんの話によって行われた。

レポート:大内正伸(イラストレーター・作家)

 

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