丸森町2日目。今日明日と「NPOあぶくまの里山を守る会」主催の「大地の再生講座」が行われ、一般参加者も集まった。集合場所はカフェ「きっさこ」駐車場。
まだ台風被害の余波が感じられる水たまりや土砂移動の痕が残る中、案内を受けながら敷地を見回る。この道は台風19号と21号の時に土砂が流れてきて不通になった。カフェのご主人が自ら人力で道を直されたそうだ(ご自宅がこの道の山側にある)。
台風19号の上陸が10月12日・・・それからカフェを再開するまでおよそ1か月かかったそうだ。ご自宅の奥にはかつて山砂を採るためにつけられた道が開かれており、その奥が山崩れを起こし、道を伝って土砂が流れてきた。左手にはかなり太く成長したスギ林の何本かが倒壊していた。
長年詰まっていた谷筋が台風被害によって開かれ、一気に空気が通り始めた様相が感じられた。崩れた跡には石や流木が適度に配置され、安定地形に変わっており、「ここはもう過度に手を入れる必要はない」と矢野さんは言った。
再び駐車場に戻り、入り口に残る大きな水たまりの水を動かす。
既設の開水路に向かって水みちを切っていく。三つグワで、手感触で土の硬さ・深さ感じながら掘っていく、そして、流速が早まらないように、直線で最短をたどるのではなくカーブを描く。
流れの動きを観察すると、かなり遠くの水まで動き始めることがわかる。カーブを作っても最後の落ち口の傾斜がきついために土が削れてしまう。
その時は枯れ草を利用して流速を調整したり、落ち口に石などを置いて干渉を作る。落ち口の勢いが弱まるだけで上流の流れに影響を与えるというから面白い。先に見た土砂崩れをマクロ版とするなら、この流れはミクロ版といえる。相対的に同じ(相似形)なので工事にそれぞれの考え方を応用することができる。
約1時間半後、水たまりが無くなった。
駐車場内にも水みちを切ってぬかるみを弱めていく。
矢野さんが引いたアウトラインに沿って三つグワ、ケンスコ、移植ゴテで水切りを入れていく。出口の浸食に注意するだけでなく、カーブの「ふくらみ」は大水のとき逃げ水が分散するように壁を立てないで均し気味に作る。
この水切りは子供の頃の泥水遊びを思い起こさせ、だれもが嬉々として取り組むのである。
規模が大きい所は重機も活用する。
ここの水はけをよくすると、隣に積まれた木材の乾きや腐蝕に大きな影響を与えるだろう。
無理に開削せず、自然のくぼみをつないでいく感じで。土の表面はスコップや移植ゴテの裏側ですべすべに仕上げておくと、風も流れて乾きやすい。ここでも手感触が重要になる。おもだった水がはけた後、もういちどこのような修正を加えるのである。
一般参加者は10時集合、まずは自己紹介。「NPOあぶくまの里山を守る会」主催の「大地の再生講座」は今回で4回目になる。会は今年で設立10周年になり、記念講演として8月に”奇跡のリンゴ”の木村秋則氏、山地酪農の中洞正氏が招かれ、パネルディスカッションに矢野さんが参加された経緯がある。
水たまりが残る部分にセメント粉をまく。
凹部に炭と枝を入れる。
炭、粗腐葉土をまく。
これで一通りが完成である。ぬかるみが消えただけでなく、爽やかな風が動き始めるようになる。見た目にも美しい。
(その2に続く)
レポート:大内正伸(イラストレーター・作家)
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